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俺、椿海斗は今幼馴染の家へと向かう途中で、今日の出来事を振り返って思い出していた。
保健室以降、まともに蛍と顔を合わせていない。あの後、アイツも意識していたせいか、今日一日はずっと避けられていた。
なんというか、我ながら、やってしまったというか……。
……いや、まぁそれもそのはずなんだけど。
俺と蛍は事故とはいえ、キスしてしまったのだ。
あの保健室での出来事は俺に落ち度があったので謝る機会を探していた。
まぁ避けられていたのでその機会はまったくこなかったが……。
だが、このまま放置しておいて俺達の仲が悪くなるのは避けたい。
嘘かと思いたいが、俺も意識していた。
あの一瞬、蛍を女の子と見てしまった。
シャープな輪郭にさらさらの髪。
細い眉と愛らしくて吸い込まれそうな青い瞳。
プルンとした唇、すっきりとした鼻筋。
そして、恥ずかしそうに漏れる小さな吐息の数々。
アイツの赤く染めた表情を、俺は未だに頭から消すことができないでいる。
――やっぱり、俺……蛍の事……
歩くスピードがだんだんと落としていき、立ち止まってしまう。
もう蛍の家が見えている。
しかし、ここにきて俺は蛍の家へ足を運ばせる事に躊躇ってしまった。
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