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ピンポーン!
インターホンが鳴る。
きっと、海斗が来たのだろう。
まだ靴を履き終えていない僕は少し焦ってしまう。
「兄さん。先に出て、海斗と待っていて!」
「おう、わかった! 早くしろよ! でないと……――」
「いいから早く行ってください……」
「ちぇ~! 冷たいな~、蛍ちゃんは」
兄さんが文句を言いながら、玄関の扉を開けて先に外へ出る。
靴の紐を結び終えて、僕も扉を開けて外へと出た。
海斗は大きな欠伸をしながら、兄さんと挨拶を交わしていた。
僕は玄関の鍵を閉めて、二人の方に駆け寄る。
「おはよ、海斗。……なんだか、眠そうだね」
「ああ、昨日は色々あって、なかなか寝ることができなかったからな~……!」
海斗が僕の顔をニヤリと見て、言う。
これは僕のせいだよな……。
うぅ……、面目ないです。
「ご、ごめん……」
「あははっ、冗談だよ! 気にするな! それよりさ……――」
海斗の目線が僕の頭の両サイドへと向けられた。
その目はまるで何か珍しいものでも見たように、瞬きをピクピクと何回もしている。
あぅ……。
頼むから、そんな目で僕を見ないで。
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