3632人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっ……蛍……っ」
「ん、何ですか……?」
「あ、兄の頭を……撫でるな」
「どうしてです?」
そう聞きながら、兄さんの顔を覗いてみると、紅葉した葉っぱみたいに顔を赤くさせていた。
……まさか。
兄さん、もしかして……照れてる?
「ねぇ、兄さん。……顔、赤いよ?」
「……それは蛍の気のせいだな」
兄さんの返事には、いつものような余裕が、こもっていなかった。
……やっぱり、照れてるんだ。
「えへへ……♪」
僕は、少し口元を緩ませて、軽く微笑んだ。
兄さんの照れた顔を見るなんて、子供の頃以来だ。
ちょっと、兄さんの意外な面を見たかもしれない。
僕は苦笑しながら、兄さんの頭を撫でていた手を、そっと離した。
「これで、さっき僕が言いすぎた分はチャラ……ですよ? 兄さん」
「あ、……ああ」
最初のコメントを投稿しよう!