異形の歌姫

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アンネさんはやっぱりないている。ぽつぽつとなみだがあたまにあたる。 そっか、わたしのなみだじゃなくてアンネさんのなみだだったんだ。 「わかったかい、クローゼ。この子にとって、ここでのくらしは『しあわせ』なんだ」 アンネさんがぽつりとつぶやく。ひとりごとなのかクローゼさんに言ってるのか、よくわからない。 「だからわたしたちがこの子のしあわせをこわすようなまねをしちゃいけない。この子のしあわせを守ってやらないといけないんだよ!」 アンネさんはなるべくこえをおさえて、でもきびしいくちょうでクローゼをしかった。 クローゼさんはうつむいて、すまない、とつぶやいた。 そのこえはふるえていて、もしかしたらないてるのかもしれない。
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