~蛇~

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

~蛇~

烏山邸に救急車が到着した 同時刻 【蛇煉】は思い出の詰まった、懐かしき幼稚園に駆け込んだ。 しかし今の【蛇煉】に思い出に酔いしれる余裕は無かった。   …平日の夕方だけあって 子供を迎えに来た親達で敷地内は ごった返していた。   その人混みの中、【蛇煉】は 一人の壮年男性に近寄った。 その姿は 見た目から想像できる、文字通り【死に神】の用な人物だ。   「なんだぃ?もぅ来ちゃったのかぃ?…フフッ…西の蛇よ。」 そう不適な笑みを浮かべながら その男性はゆっくり立ち上がった。 …背丈は成人男性の平均身長は裕に越しているであろう   …『…田中先生…アナタは何者なんですか? 何で僕の事を【西の蛇】と呼ぶんですか!?』 【蛇煉】は 混乱しながらも 必死に思った事を言った。   「蛇煉くん 先ずは落ち着こうか… そして、何故ここに来た?」 田中は優しい声で【蛇煉】に語り掛けた… しかし 微笑 すらしていない 冷たい目のまま 『母が苦しみながら、アナタの名前を言っていました…それで…』 【蛇煉】も 相手を警戒しながら慎重に答えた   「フフッ…違うだろう、嘘を付いちゃイカンなぁ…西の蛇よ」 『アナタは何なんですが!!人を訳の分からない呼び方で呼んで!!』   「君には【邪気】が見えたはずだよ」   『【邪気】…?』 「まだ分からないのか? 弟の【鬼煉】くんの体から出てる 黒いモヤ のようなものの事だよ」   『何でそれを!?』   「私は何でも知っているからさ」   『なら 何で【鬼煉】はその【邪気】を出していて、それが僕に見えるんだ!!』   「それは直に分かる… おぉっともぅこんな時間だぁ! まぁ精々、後7回の夏を楽しみたまえ…フハハハ」 その 弱者を見下す笑い声は天に消えていった… 田中の姿と共に…     そして 【蛇煉】が家に帰ると、 父、武 が遺品の整理をしていた… 一粒の涙も流さずに。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!