運命

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僕の家は、父・母・僕・弟の四人家族だった。   弟は、人を疑うことを知らない、いわゆる純粋な人間でとても優しかった。   そんな弟が、ある日僕にこう言ってきた。     「ねぇお兄ちゃん、僕とお兄ちゃんは運命で繋がれてるんだよね? だからこうして【家族】として出会えたんだよね?」   僕はその時思った。     このままじゃ駄目だ。   弟のような人を疑うことを知らない人間は、絶対にこの先、世間を渡り歩いていけない。   そう感じた僕は、弟にこう答えた。     「よく聞いてくれ、弟よ。 運命なんてないし、僕たちがこうして【家族】として出会えたのも、両親が僕たちを生むことを選んだんだ。 それはどういうことかと言うと、君は知らないと思うが、今は子供をパソコンで選べる時代なんだ。 1つ1つ項目を選択して、それに合った子供をパソコンが選び出してくれるんだ。 だからこうして僕たちが【家族】でいるのも、運命なんかじゃないんだ。 両親の都合のいいように家族にされた、悪い言い方をすればそういうものなんだよ」     僕がそう答えた後、弟の顔はみるみる青ざめていった。   あぁ、言わなければよかった。   ごめんよ、弟。   でもそれが君のためなんだ。
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