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匠が高校1年の12月24日。
「お兄ちゃん、私もう出かけるからね」
麻依は友達の家でのクリスマスパーティーに出かけ、父と母もそれぞれの用事ですでに出かけていた。
朝食を終えた匠が朝シャンを済ませ、髪を乾かしているとリビングに置いていた携帯から着メロが聞こえてきた。
慌ててリビングに戻った匠は携帯を手に取り、画面を見ると、『朝倉唯』という名前が表示されていた。
匠のクラスメイトである朝倉唯は、匠と同じ図書委員をしていた。
普段からよく図書当番で一緒になり、よく話もする唯に匠は思いを寄せていた。
「もしもし、どうした?」
『あ、匠くん、あの・・・今日って、何か用事とかある?』
この日の匠は崇たちとカラオケの約束があった。
「え、今日?
何もないけど・・・」
『本当?よかった。
あ、あのね、今日・・・デートしない?
あ、デートっていうか一緒に遊ぼうっていうか、そんな感じなんだけど・・・』
好きな子からの突然のデートの誘いに匠のテンションは急上昇した。
匠は気持ちの高まりを抑えつつ、冷静さを装って答えた。
「・・・いいよ。
何時にどこに行けばいい?」
『じゃあ、1時に駅の北口の「アポロ」でいい?』
「わかった。じゃあ、1時に」
匠は電話を切ると、小さくガッツポーズした。
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