2年前の12月24日

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光の中から唯が話しかけてきた。 光の中にいる唯はとても幻想的で、綺麗だった。 「すごく綺麗でしょ? このクリスマスツリー、今年は絶対、匠くんと一緒に見たかったんだ!」 匠は何かを決心したような口調で話し始めた。 「唯・・・あのさ・・・俺・・・」 唯は匠の言葉を遮るように思いを口にした。 「匠くん、私はあなたが好き! 私と・・・付き合ってください」 匠は無言のまま唯を見つめていた。 「どうして?」 匠の第一声に唯は思わず声を失った。 「どうして先に言っちゃうんだよ」 「え・・・ごめん」 思わず謝った唯を見て、匠は笑ってしまった。 「ふっ・・・でも、ありがとう」 「ちょっと、笑うことないでしょ」 「何かおかしくて。 じゃあ、そろそろ帰ろうか」 匠はさりげなく唯の手を握り歩き出した。 「ところで匠君・・・その・・・」 「ん?返事?」 唯は少しだけ恥ずかしそうに言った。 「その・・・返事はいつでもいいんだけど・・・」 匠はそっと素早く唯の唇に自分の唇を重ねた。 チュッ 「帰ろっか」 「・・・うん」  匠が窓の外を見ると、灰色の空から降り出してきた無数の白が目に入った。 「ホワイトクリスマスか・・・1%でもなかったな」 一言、匠はつぶやいた。
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