出会いへの序章

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 クリスマスイブの前日、12月23日。  東京都内、とある高校の3年E組の教室では大学受験の勉強をしている生徒もいれば、翌日のクリスマスの予定の話題で盛り上がっている生徒たちもいる。 葉山匠は携帯サイトの天気予報を見ながら後ろの席の森孝文に話し掛けた。 「孝文、明日、雪降るっぽいぞ。 珍しいな、クリスマスに東京で雪が降るなんて」 しかし、孝文はノートに英文訳を書きながら素っ気なく答えた。 「雪?12月だし、降るときは降るだろ」 匠は何気なく話を続けた。 「あ、そうだ。明日から冬休みだし、カラオケでも行かないか?」 すると孝文はノートを閉じると、 「あのな・・・俺らは受験生だぞ。いくら高校生活最後のクリスマスだからって遊ぶわけにはいかないだろ。 てか、お前も少しぐらいは勉強しろよ!」 最初は冷静に喋っていたが、最後はヒステリー気味の口調だった。 そんな孝文をよそに、匠は、孝文にとって衝撃的な事実を告げた。 「あれ、お前に言ってなかったっけ? 推薦で慶政に決まったんだ」 孝文は思わず呆然としてしまった。 「す・い・せ・ん・・・?あの‘推薦’ですか? しかも慶政!?」 匠が合格した慶政大学は日本でもトップレベルの私立大学だった。 孝文のショックはよほど大きかったようで、ただただ、わけのわからないことを言い出した。
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