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そう言い残して麻美は自分の席に戻った。
孝文は席から立ち上がると、
「さてと、誰か暇そうな奴いないかな」
匠は孝文を見上げて尋ねた。
「てか、お前、勉強はいいの?」
「バカ、それどころじゃないだろ。
お、いいのがいるじゃん」
孝文は少し離れた席に歩み寄った。
それは匠、孝文、麻美と小学生の頃から付き合いのある近藤崇だ。
崇も匠と同じ慶政大学に推薦合格していた。
「崇、明日、合コン行かないか。
何か、麻美が才女を連れてくるとか・・・」
「いいけど、お前、勉強は?
大丈夫なのか?」
孝文は度重なる勉強勧告に、やっとKOされた。
「・・・どいつもこいつも勉強、勉強って・・・心配されてるんだか、バカにされてるんだか・・・」
匠はフォローするかのように2人に割って入った。
「ま、息抜きも必要だって。
じゃ、崇、明日の1時に駅の北口のカラオケに集合な」
外の季節は秋から冬に変わり、通りの並木も葉を落とし、街には冷たい北風が吹いていた。
匠が学校の帰り道、本屋を出たときには、辺りは薄暗くなり、西の空は紅に染まっていた。
匠が家のドアを開けると、1人の少女がキッチンから顔を出し、
「おかえり、お兄ちゃん」と出迎えた。
その少女は匠の妹の麻依だ。
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