学園

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ハイヒールでカツカツと音をたてながら教卓に着いた。 その時の立ち振舞いの美しさに目を奪われそうになる。 雪路先生が来たということは担任がまためんどくさがったのだろうか。 雪路先生はクラスを見渡して 「出席番号順に前に出て自己紹介をしろ」 それだけを言って教卓に備え付いている椅子を持ち教室の後ろについた。 教室がシーンとなった。 みんなが目を動かし状況を打開する人を探す。 きっと出席番号一番の人を探しているんだろう。 ふと、僕はクラス替えの時の張り紙を思い出す─────このクラスの名簿の一番上に書かれた『赤葉紅葉』の名前を。 ・・・あれ? ・・・僕じゃん。 冷や汗が流れるのを感じた。 その瞬間後ろから冷たい声が聞こえた。 「一番赤葉紅葉。早くしろ」 僕は何も考えず立ち上がっていた。 クラスの人たちは僕に同情したような、自分じゃなくて安心したようなそんな顔をして僕を見ていた。 これはもう自己紹介をするしかない。 そう思う状況だった。 出席番号制度を少し呪い覚悟を決め前に出た。
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