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「あぁ!!ずるいよ、お兄ちゃん!!」
そう言って少女は走り出した。
全速力で走っているのだろう。深く被っていた麦わら帽子が脱げ付いていた紐が首にかかり帽子が後頭部で縦になっている。
「そんなに慌てて走ったら危ないわよ」
女性がよく通る澄んだ声で言った。
その直後少女が前屈みに派手に転んでしまった。
「ほら言わんこっちゃない」
男性が苦笑いをしながら女性と一緒に近づいていく。
その時だった。
まったく予期していなかった事態が起こったのだ。
「・・・えっ?・・・ら、蘭っ!!」
二人は血相を変えた。
持っていた鞄などを放り投げ同時に走り出していた。
「痛いよぉ・・・パパぁ・・・ママぁ・・・」
少女はその場でうずくまり泣きながら痛みに耐えていた。
ブオオォォォンと、大きな音をたてたものが近づいてきた。
理不尽にも生い茂る樹々をバキバキとへし折り、ブロック塀を破壊しながら真っ直ぐ少女に向かって走っている。
そのわずか数秒後、大きな鈍い衝撃音とともに三つの何かが吹き飛んだ。
「どうだ!!蘭!!僕が一番乗りだ!!見てよパパ、マ・・・マ・・・・・・」
少年が興奮気味に振り返るとそこに家族の姿はなかった。あったのは意識のない運転手の乗ったトラックと滅茶苦茶に荒れ果てた辺りの光景だけだった。
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