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ベッドの上で、安らかに寝息を立てて眠る少女。
母は少女を見下ろし、少女の両目を覆い隠す長い前髪を、優しく払った。
十六のカインと同い年か、それ以下くらいを思わせる、若くて、可愛らしい顔立ち。
肌は、雪のように白く、美しかった。
「ちょっと失礼」
外に跳ねた癖のある髪を撫でると、少女の黒いコートをはだけさせる。
コートの内は、黒一色だった。
黒い長袖の服に、黒いスカート。
露出の少ない、地味な服装だった。
「あらまあ、女の子はもっとおめかしするべきよ」
母は微笑を浮かべながら、少女の上半身の衣服をたくしあげる。
あらわになる、真っ白な細い腹部。
その白い肌の右脇腹に『Ⅳ』という文字が、刻まれていた。
母はそれを見ると、眉間にしわを寄せ、表情を曇らせる。
たくしあげた服を元に戻し、もう一度、少女を見下ろし呟いた。
「もう、そんな時期、か。
とうとう、動きだしたのね。
……文字盤の女神、ちゃん」
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