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「あ、母さん。
あの子、どうだった?」
「あらやだカイン、そんなこと聞いちゃいけません!
とても一母の私から、あんなこと言えないわよ~」
「…………」
腰をクネクネさせながら部屋から出てきた母を、カインは苦い顔で眺める。
冷たい視線を無視して、母は鼻歌混じりで台所に立ち、調理の続きを始めた。
やけに上機嫌な母親と、やたら鼻を突く香ばしい匂いに、妙な違和感を覚えた。
「あれ、そういや親父は?
部屋にいないのか?」
「むふ、そのことだけどね、カイ~ン」
カインに背中を見せたまま、低い声で笑う。
「あなたのパパは今日、仕事に行きました!」
鳥肌が立つ単語と、冗談にしては質の悪い言葉に、カインの時間が一瞬止まった。
「……は、え、なに?
仕事って、はい?
あれ、自宅警備……でしょ?
親父、え?」
「こらこら、どもり過ぎだよ、カイン。
ほら、水」
「あ、どうも。
……じゃなくて!
ええぇぇぇぇぇぇマジでぇ!?」
近所迷惑な叫びが、夜を迎えた村に響き渡る。
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