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場違いな空気を痛感しつつ、少女は扉を開けて顔を覗かせる。
それに気付いた母は脱兎の勢いで少女に近付く。
「あら、起こしちゃったかしら?
体の方はもう大丈夫かい?
どこか痛むところは?」
「あ、は、はい、大丈夫、です。
あの、私は、一体……」
「まあまあ、立ち話もなんでしょ。
ほら、そこ座って。
もうすぐでご馳走が出来るから、それまで待ってなさい」
「えっ、でも私……」
「気にしなくていいよ。
母さん、いつもそんな感じだから」
猪みたいな母に戸惑う少女を、見兼ねたカインが助け船を出す。
少女は促されるまま、カインの隣りのイスに座る。
香ばしい匂いに刺激される空腹感と、同年代の少年がいることに安心感を抱いた。
カインはコホンと咳払いをし、口を開く。
「それじゃあまず、君の名前は?」
「名前、は……イブ、です」
イブと名乗った少女は、詰まらせながらもゆっくりと答える。
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