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カインはイブと向き合い、顔の上半分を覆い隠す前髪を直視した。
「オレはカイン、よろしく。
ところでイブ。
質問の前に……それ、前見えてるのか?」
「え、これですか?」
イブは、カインの視線が向けられている前髪を手で撫でる。
「一応見えてるです。
でも私、その……人の目を見て会話するのが、苦手なんです。
何だか、気恥ずかしくて……」
イブは顔を俯かせ、恥ずかしそうに頬を掻く。
カインはふ~んと関心なさげに呟き、右手を伸ばした。
カインは右手をイブの前髪の隙間に滑り込ませ、優しく払う。
突然の行動を理解する前に、カインの蜂蜜色の瞳と、イブの隠された翡翠色の瞳が重なる。
「ふわぁ!カカ、カインさん!?
何するですか!」
「さん付けはやめてくれね?」
前髪を慌てて押さえ、飛び上がりそうな勢いでイスごと後退するイブ。
「あ、それじゃあカイン君で……じゃないです!
私、目を見るのは苦手ですって今言ったばかりじゃないですか!」
「いやぁ、まさかそこまで機敏に反応するとは思わなくて」
カインは、いたずらが成功した子どものような笑顔で言った。
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