28人が本棚に入れています
本棚に追加
「あはははは!」
「笑わないで下さいです!」
「いや、だって、行き倒れって……」
ククッと込み上げる笑いを、腹を押さえてなんとか堪えようとするカイン。
母も見えない位置で細かく肩を震わせていた。
「お金も食料も、前の町で底を突いたんです。
ここまで食い繋いだ自分を褒めたいくらいですよ」
イブは赤らむ頬を膨らませて、拗ねたように見せる。
そこに母が最後の特大皿を食卓に置いて、三つ目のイスに腰掛ける。
「ごめんなさいね~。
だったらスゴくお腹空いてるでしょ。
ささ、遠慮なく食べなさい」
「えっ、母さん、親父は待たなくていいのか?
これって、親父の就職祝いだろ」
「それなら気にしなくていいわよ。
あの人はさっそく忙しいみたいだから、帰りは遅くなるんだってさ。
だから本当はカインと二人っきりで祝うはずだったんだけど、イブちゃんが来てくれたお陰で食卓が華やかになったわ」
「そんな……恐縮です」
眩しいくらいの笑顔で言う母に、イブはペコリと頭を下げる。
カインはいまいち納得してない様子だった。
「なんか、想像出来ないな。
だったら親父はいつごろ帰るんだ?」
カインがそう言うと、母は壁に掛けてある時計に目をやる。
「さぁ、何時になるかしら」
最初のコメントを投稿しよう!