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カインが家から飛び出し、リックもその後を追って駆け出した。
それを見計らい、遅れてイブも立ち上がる。
「行かなきゃ……です」
「あら、どこに行くのかしら?
イブちゃんも聞いたでしょ。
外は危ないわよ」
母は呑気に、湯気の立つ紅茶をすすった。
イブは、不思議なほど落ち着いてる母に振り返って、一礼をする。
「その魔物は、私を追って来たんです。
これは私の責任です。
だから……行かなきゃなんです」
「イブちゃん」
「ご飯……美味しかったです」
切ない笑顔でそう言い残して、開けっぱなしのドアを駆け抜けた。
ポツンと一人残された母は、それでも優雅に、ただそこにいた。
カップを持ち、もう一口紅茶をすすり、音もなくカップを皿に戻す。
外から流れてくる誰かの叫び声がイヤというほど聞こえる家内で、母は天井を眺めた。
「随分と、お早い登場じゃない。
私達の時代は終わった。
新しい時代は、すぐそこだよ……あんた」
意味深なことを呟き、悲しみをおびたような瞳で家を出た。
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