28人が本棚に入れています
本棚に追加
村人たちは、皆どこかへ逃げようと必死だった。
その中でカインは、ひたすらに元凶のもとがいる村の入口へ足を急がせた。
時には誰かと肩がぶつかり、その度に身がよろける。
それでも、一つの執念に囚われたカインは、腹の底からわく怒りにつき動かされた。
「ハァ、ハァ……くそ、もう二度と……なくしてたまるかよ!」
奥歯を噛み締める。
「おい、カイン!ちょっと待てって!」
「あれ、リックさん、いたんっすか」
「いたって……年上に対して失礼だぞ、それ」
リックがカインの後ろを走っていた。
頬をひくつかせて突っ込んだリックだが、カインは見向きもせずに走り続けた。
そんなカインを見て、リックの胸に不安がよぎる。
「カイン、あんまり感情的になるなよ。
お前まで、トトみたいに……」
「リックさん!」
トトという名がリックの口から出た瞬間、カインが怒鳴る。
「あっ……悪い」
リックは本気で反省したように、目を伏せた。
そうこうしてる間に、人だかりが出来た村の入口が見えてきた。
最初のコメントを投稿しよう!