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その人だかりに近付くと、そこには異様な光景が広がっていた。
カインとリックは走る速度を緩めて、最終的に足を止めた。
カインは思わず呟いた。
「なんだよ、これ……」
そこには村人たちが、入口を中心に弧を描くように集団で固まっていた。
その中に動くものは一人もいない。
この場にいる人間すべてが、様々な体勢で石にされていた。
何人かが持つ松明だけが、虚しく火を灯している。
「なんだよこれ!なんで村のみんなが、石にされてんだよ!」
「酷いな……これも魔物の仕業か?」
怒りをあらわに見せるカインの隣りで、リックは状況を冷静に分析している。
その二人を一軒家の屋根の上から、二つの瞳が見下ろす。
「今宵は客の多きこと。
それもまた、哀しき運命か」
空から聞こえた声に戦慄が走った二人は、声の主に視線を向けた。
高い位置で流れる赤い髪、軽い鎧を纏った魔族と名乗るものは、三日月を背に佇んでいた。
「アイツが……ッ!」
カインは奥歯を噛み締め、凄みをきかせて睨む。
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