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刀を振り上げて自分へ落下してくる魔族の男に、カインは足が竦んで行動が遅れた。
「バカヤロッ、カイン!
何ボケッとしてんだ!」
「うわ!」
真横からリックが飛び出した。
カインを背後に突き飛ばし、庇うように両腕を広げて魔族の男に立ち塞がる。
白刃は、無情に振り下ろされた。
背中から倒れたカインは、素早く上半身を起こして、リックの背中を見る。
その光景に、目を丸くした。
「カイ……ン……逃…………げ……」
刀を振り下ろしたままでいる魔族の男と、体を大の字に開いたリック。
カインを庇って正面を袈裟に切り裂かれたリックは、その傷から全身を徐々に石へと変えた。
「リック……さん……」
震える手を、石と化したリックの背中に伸ばす。
「しかし、魔王様のお考えは理解に苦しむ。
何故、人間を殺してはいけないのだ。
生かす価値もないゴミを、何故……」
刀を払い、魔族の男は独り言を呟くが、カインの耳には届かなかった。
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