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俯いたカインはゆらりと立ち上がる。
おびただしい殺気を感じとり、魔族の男はカインに目をやる。
「よくも、リックさんを……よくも、村のみんなを……よくもよくもよくも…………
許さねぇぇぇぇぇ!!」
怒りが爆発した。
全力で駆け出し距離を詰めると、握り拳をつくり、殴りかかった。
「だぁぁぁあああ!……ガハッ!?」
しかし、カインの拳が届く前に、魔族の男が繰り出した蹴りが直撃した。
吹き飛ばされたカインは民家のドアを貫き、家の中に消えた。
「非力なり」
魔族の男は倒壊したドアへ、ゆっくりと歩み寄る。
「カハッ……くそっ、畜生!」
砂埃がたちこめる家内で、カインは起き上がり地面を殴る。
体は鍛えてあるが、何の役にも立てず誰も守れないでいる自分が恨めしかった。
刀を持った魔族の男は、カインが倒れる家に迫る。
その時、カインの背後から二本の腕が伸び、口を塞いだ。
「んっ……!」
「静かにするです、カイン君」
口をしっかり塞いだままカインを引きずり、裏口から外に出る。
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