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カインを引きずり、明かりが灯っていない小さな小屋に身を潜めた。
「ここまで来れば大丈夫です」
「ぷはっ……イブ、なんでこんなことするんだよ」
「こんなこと?」
イブが尋ねると、カインは顔を上げてキッと鋭く睨む。
「村のみんなが、石にされたんだぞ!
なのに、なんで逃げるみたいなマネするんだって、聞いてんだよ!」
激しく檄昂するカインだが、イブは至って冷静に冷たく言い放つ。
「カイン君では、あの魔族をどうすることも出来ません。
だから下がらせたんです」
小声で、私の責任だから、と付け加えたがカインには聞こえなかった。
しかし、カインの怒りは言葉で言いくるめれるほど、やわなものではない。
「ふざけんなよ!
あんなヤツ、すぐに村から追い出してやる!
オレの村を、これ以上荒らされてたまるか!」
「カイン君、分かってくだ……」
イブはあまりにも驚いて、二の句が継げなかった。
渦巻く怒りはやがて悲しみに変わり、堪えきれなくなった大粒の涙が、カインの頬を伝う。
「おっ、オレが、オレが村を守んないと、リックさんが、母さんが、みんなが、いなくなっちまう。
オレのせいで、オレが弱いからっ……トトが……」
「……トト?」
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