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泣き崩れるカインに、イブはどうしたらいいのか分からず慌てふためく。
しかし、今は魔族の対処を優先しなければならない。
自分を無理に納得させて、イブはカインから離れる。
無言のまま小屋から出ようとドアに手を押しつけると、カインが低く呻いた。
「待ってくれ、イブ。
オレにも何か、出来ることはないか。
何か、手伝わせてくれ」
切実に願いいるカインは、何かを決意したような力強いまなざしをしていた。
イブはそのまなざしを正面から受け止めると、くすっと微笑みを零した。
長袖の黒いコートから出る右手を差し出す。
「一緒に来て下さいです、カイン君」
「おう」
手を握り返し、立ち上がる。
イブは再びドアに手をあて、そして思い出したかのようにカインに振り返った。
「手伝ってもらう次いでに、一つだけお願いしてもいいですか?」
「お願い?」
カインが首を傾けると、イブは前に向き直り顔をカインから見えないようにする。
「私の魔法を見ても、嫌いにならないでほしいんです」
「えっ?」
「アハハ、やっぱりなんでもないです。
さ、行くですよ」
見え見えの作り笑いでその場を取り繕うイブ。
カインは作り笑いだと分かっていたが、敢えて追求せずにイブと共に小屋を出た。
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