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二人は息を潜め、物音をたてないよう静かに移動する。
そして、村の入口と石像となった村人が群がる広場が見える位置にまで辿り着いた。
門の真下には刀を収めた、直立不動の魔族の男もいる。
イブは物陰で、カインに顔を近付けて囁く。
「カイン君に、やってもらいたいことがあるんです」
「なんだ?」
「あの魔族から、本人を証明するものを奪ってきてほしいんです。
例えば、髪の毛や、血なんかです」
「血……いいけど、それを何に使うんだ?」
「秘密です」
軽くあしらわれて、どうにも腑に落ちないカイン。
しかし、
「……っ!気付かれたです」
「えっ!」
イブの言葉に、カインは様子を探るように物陰から魔族の男を見た。
魔族の男は刀を抜き、しっかりとした足取りで二人のいる位置へ歩く。
張り詰めた空気に、カインの背筋にはイヤな冷や汗が伝った。
「もう、後には引けないですよ。
いいですか?」
カインは肯定の意味で、首を縦に振る。
「それじゃ、行くですっ」
イブが物陰から飛び出し、一瞬遅れてカインも後を追う。
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