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魔族の男は石像の群を抜けると、並んで立つ二人の前に立ちはだかる。
「観念したか、或いは潔く散ると決めたか。
我は後者とふむが?」
「どっちも違うっつーの、バーカ」
嫌味たっぷりにカインが言う。
魔族の男は足の筋肉を肥大させ、爆発的に地面を蹴った。
土埃が舞い、同時にイブは左に飛んだ。
一人反応が遅れたカインが気付いた時、刀を横に構えた魔族の男は眼前まで迫っていた。
「カイン君!」
「のわっ!」
咄嗟に膝を折り地に伏せる。
その直後、右脇を魔族の男と突風が、そして頭上を白刃が通過し、掠めたカインの金髪を数本舞い上がらせた。
息をする間もなく、すれ違った魔族の男は踵を返し、刀を頭上に掲げた。
「前に飛ぶです!」
体は追いつけないと悟ったイブは、大声でカインに指示を下す。
カインはその言葉をなんとか聞き取ると、屈曲した膝を慌てて伸ばし前方へ跳ねる。
振り下ろされた刀は虚しく空を切り、地面を叩いた。
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