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「所詮は人間。
我ら魔族には、永劫叶わぬ」
悠然と構える魔族の男。
「今のでダメなのかよ」
と正面のカインは狼狽し、
「むぅ」
背後でイブは膨れっ面になる。
「何故抗う。
運命とは受け入れるもの。
醜く抗い、何になる」
魔族の男の諭すような口調に、カインの怒りは再び沸点へ達する。
「黙れっ!
運命なんか信じねぇ。
醜くったって、オレは足掻き続けてやる!
オレが未来を生きなきゃ、過去に置いてかれたアイツに合わせる顔がないんだよ!」
「笑止ッ」
魔族の男は刀を横に傾けて、一気に駆け出した。
それを見越したカインは魔族の男よりも一瞬だけ速く動き、足元から砂利が混ざった一握りの砂をとる。
狙いなんか定めず、握った砂を目の前に撒き散らした。
「くっ……小癪な!」
目も体も魔族の男には到底適わないが、がむしゃらに撒いた砂は魔族の男から視界を奪った。
しかし、魔族の男は気配だけでカインの位置を把握し、刀を振り上げた。
微妙に鈍った動きに好機を期して、カインは右腕を真横に伸ばし、左に体をずらす。
瞬間に振り下ろされた刀は、カインの右手首を捉え、振り抜かれた。
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