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魔族の男が扱う刀は、斬った対象を石化する。
実際に目の前でリックが斬られ、石化に至るまでを間近で見ていたカインは、持ち主を除けば誰よりも理解していた。
その斬撃が、カインの右手首を捉えた。
痛覚を刺激することはなく、斬られるとは違った、奇妙な感覚が手首に残る。
また、魔族の男は確かな手応えを感じ、すぐさま標的を背後のイブへ移す。
その刹那、左へ飛んだカインが、鋭く踏み込んだ。
斬られた所から徐々に蝕まれていく中、カインは叫んだ。
「だああああ!!」
気合いと共に、跳躍する。
手が動かなくなる前に、拳をつくり、肘と肩が固まる前に、後ろへ引き、腰が固定される前に、捻る。
「なに!?」
魔族の男が気付き振り返った瞬間、石となり硬化したカインの右拳が、頬を殴った。
魔族の男は、大きくよろける。
「イブ!あと……は、た……の…………」
決死の一撃が決まり、笑顔とその言葉を残して、空中で殴った姿勢のまま石化し、ゴトリと地面に落ちる。
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