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取り出したわら人形に、魔族の男から奪った一本の髪の毛を手早く巻き付ける。
「この魔力……貴様、女神か!」
「今さら気付いても、手遅れです」
イブは気迫に満ちた表情で睨む。
すると、手に持つわら人形を、真上に高く放り投げた。
そして両腕を広げ、指先まで真っ直ぐ伸ばした掌を左右に向ける。
「貴様の生け捕りが魔王様のご命令。
おとなしく捕まれ!」
魔族の男が駆けると、地面と平行にした刃が月光を反射し煌めく。
しかし、イブの瞳は一時たりともその白刃から逸らされることはなく、とうとう魔族の男が間合いを詰めた。
捉えたと確信したその時、放ったわら人形が緩く回転しながら二人の間に落下してきた。
目を細めたイブは掌をギュッと握り締め、小さな唇が微かに動く。
「縛(バク)」
右足を踏み込み、刀を横薙ぎに払おうとしていた魔族の男は、イブの呟きを最後にピクリとも動かなくなった。
深い呼吸を繰り返すイブと不自然に硬直した魔族の男の間には、空中で静止しているわら人形があった。
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