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わら人形の中心に定めた杭が打たれた時、魔族の男は俯せに倒れた。
涙を流しながら笑うイブは、わら人形から食い込んだ杭を引き抜く。
地面に突っ伏す魔族の男は最早指一本も動かせず、苦しそうに呻いている。
「アハハ、まだ生きてるですか。
魔族って、スゴいですね」
「おの……れ……!」
イブは夜空を仰ぎ、両手を広げる。
「アハハ!アハハ!アハハ!
星がキレイです!
月がキレイです!
アハハ!アハハ!アハハ!」
唄うような笑い声は、透き通った夜空に吸い込まれていった。
翡翠から零れた涙は頬を伝い、地面に落ちて八方に弾けた刹那、
「ホント、キレイだねぇ……」
女性の声がした。
イブは笑うことを止め、振り返る。
二十代前半のような若い顔立ちで、地面まで届きそうな長い金髪は肩の位置で細く束ねられている。
お腹に大きなポケットがついたエプロン姿の彼女は、身の丈ほどの長い柄と、身の丈ほどの巨大な三日月状の刃をした大鎌を担いでいた。
金色に輝くそれは、まさに月そのものだ。
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