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魔族の男がはいつくばう位置からでは、女性の姿は確認できない。
しかし、振り返ることすら許さないような覇気が魔族の男どころか、イブまでも驚愕して凍てついた。
女性は単に巨大な鎌をかついで優雅に微笑んでいるだけであって、不思議な力など塵ほども感じない。
問題なのは、その鎌である
2メートルはあろう巨鎌は神々しい見た目とは裏腹に、何かとてつもない、それこそ次元が違うほどの巨大な闇を二人は感じた。
硬直する二人に、女性は金髪を揺らして優雅に微笑みかける。
「遅くなっちゃったわね。
外の魔物たちが思ってた以上に多くて、手間取ってたのよ。
それに……」
女性はイブを見ると、かついでいた鎌を片手で正面に構えた。
「実物を先に見せておきたかったから。
これが、暗黒をもたらす祖なる闇の『夜』
イブちゃんは覚えておいてね。
これから長い間、お世話になるんだし」
そう言ってウインクをする。
呆然と立つイブの翡翠から、再び涙が溢れ頬を伝う。
先ほどまでの悲しみに満ちた狂喜の涙ではなく、嬉しさからの純粋な優しい涙。
それを見て女性は微笑み、腰を低くして鎌を地面と水平に構えて言う。
「大丈夫。
すぐ終わるから」
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