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「気絶してるみたいですけど、目立った怪我はありません。
見ない顔だし、隣り村の子ッスかね?」
少女の顔色を伺いながら、カインが説明した。
リックは腕と足を組んで、首を傾けた。
しかし、悩んだように見えたのはほんの数秒。
頭の中に、きっと面白くなるであろうシチュエーションを描き、カインに提案した。
「カイン。
まだ目を覚まさないようだったら、お前の家でその子を看たらどうだ?」
「はい?」
カインから、突拍子のない声が零れた。
リックは続ける。
「ここからならカインの家が一番近いし、お袋さんもいるだろ?
オレはこの荷物、村長んとこ届けとくからさ。
早めに上がれてよかったな」
「その前になんっすか、その笑顔!?
あとリックさんの家、オレん家の隣りじゃ……」
「はいよー!」
カインの台詞を遮り、馬の手綱を引く。
軽快なひづめの音がリズムを刻みだした。
「ああっ、ちょっ、リックさーん!」
「ハッハッハ、頑張れよ~」
「何をだよ!」
馬車は、カインと気絶してる少女を残して、入口を潜り抜けて行った。
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