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遠ざかる馬車と、気絶している少女を交互に見る。
そのまましばらく葛藤し、やがて諦めてうなだれた。
「ちっくしょー。
リックさん、面倒ごと押しつけたなぁ……
仕事は真面目にするくせに、こういう時に限ってすぐ逃げやがる」
いない相手にブツブツ文句を言うカイン。
夕日は暮れ、闇夜が差し掛かり始めた。
「うわっ、やっべ」
空を見上げて呟いた。
街灯なんてものはなく、夜になると、家々から漏れる明かりだけが頼りの村。
輝く一番星が、カインをさらに焦らせる。
「あ~、なんかスンマセン!」
逃げ道はなく、仕様がないと割り切り、少女を急いで背負う。
幸いにも、背中にくる感触は皆無だった。
それでも、付き纏う罪悪感を振り払うかのように、カインは入口を潜り、駆け足で自宅へと向かった。
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