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道中すれ違った人から背負った少女のことを尋ねられたが、あいまいな返事だけしてそそくさと逃げた。
やがてカインは、小さな窓がある平均的な大きさの家に駆け込んだ。
荒々しくドアを閉め、ようやく一息ついた。
家内のキッチンで、長い金髪を一つに束ねたエプロン姿の女性が調理をいそしんでいた。
「た、ただいま、母さん」
カインが言うと、背中を見せていたカインの母は頭だけ振り向いた。
その顔つきは若く、外見だけなら二十代に見える。
「あら、カイン?
お帰りなさい。
今日は早かったわね~……え?」
息子の異変に、当然言葉が詰まる。
調理に使っていた箸を置き、カインに駆け寄る。
「あらあらまあ。
カイン、その子どうしたの?」
「後で話すから、この子、母さんのベッドに寝かせてもいいか?」
げんなりした様子のカインは、母の寝室のドアノブを握った。
「ああ、ちょっと待ちなさい。
今、その部屋散らかってるのよ。
悪いけどカインの部屋で寝かせてもらえる?」
「…………」
カインは無言で、隣りに並んだ自身の部屋に繋がるドアを開けた。
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