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準備が調ったところで手を綺麗に洗い、部屋の隅に無造作に積み上げられた粘土に清絶されたばかりのそれを触れさせた。ひんやりとしていてとても気持ち良かった。
これはノルウェーの森の中にある大きな岩盤を思わせる。広大な自然の中にひとつ身を置いて、するすると飲み込まれていく。
そこへ奴が土足で踏み込んで来た。
「なにしてんだ。早くやれ。」
我にかえり、粘土に手を触れさせたまま、僕は黒猫に向かって頷いた。
再び作業に取り掛かる。ただ積み上げられただけの粘土を、コップほどの大きさだけ板に掬い上げた。それと同時に板の上にはすでに形が出来上がっていて、僕の手にはいつの間にか筆が握られていた。
絵の具はすべて白だった。だが僕は始めから知っていたかのように、迷う事なく色を染めていった。
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