世界の始まりと、終わりと

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 ユウはうらびれた路地を一人歩いていた。その路地に人影はない。この先にも何もないことをユウは知っている。  このような夜更けに人影が無いことは常識で考えれば何もおかしくはないが、ここミストーの街に限ってその常識は通用しない。  ミストーの街はこのイマディンの地でも最大の規模を誇る。人と物で揃わないものはないと言われ、イマディンの玄関口とも呼ばれる大都会だ。  街の規模と人口は比例する。多すぎる人口は格差を生み出し、このような路地裏には浮浪者が住み着いているのが常だった。  しかし、いつもは見られるその浮浪者の姿がここにはない。それが導く答えは一つしかなかった。ミストーのギルドで請け負った仕事の目的がここにあるのだ。  ユウは思わず息を飲んだ。暗闇の奥からは何かの唸り声が聞こえてくる。背負った大剣――バスターソードにユウは手を伸ばす。力のある戦士しか扱わない、扱えない大柄な両刃の剣だった。  今回、ミストーのギルドで受けた依頼はユウの実力をもってすれば容易い。  ――しかし、油断していた。敵は思った以上に素早く、ユウはすでに抜刀しているべきであったのだ。  過ちに気付いたときにはすでに遅く、敵は眼前でその牙を剥いていた。
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