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「──マジかよ‥」
どこからか人の声が聞こえて
ここは学校で、いくらでも人はいるんだから声がするのは当たり前なのだが、その声が妙に気になった
聞いた事のある声だった気がするから
階段を上り、惹かれるように声のする屋上に続く踊り場まで来た所で、幸村の足は止まった
否、止まってしまったと言った方がいいだろう
目の前の光景を見て、頭が真っ白になった
まるで、金縛りにでもあったように足が動いてくれない
階段を上ると、屋上の扉の前には一人の男子生徒と、女子生徒がいた
幸村のいる場所は、調度女子生徒達のいる真後ろだったので、こちらからは何をしているのかは全く把握出来なかったが、なんとなくしている事は理解出来た
男子生徒は余程背が高いのか、女子生徒は背伸びをしながら、男子生徒の制服を掴んでいて
男子生徒も、女子生徒の身長に合わせるように少し屈んでいるようだった
「──‥ぁ‥」
一瞬男子生徒が顔を上げた際、幸村と目があってしまった
まさか、そう思った
信じられなくて、信じたくなくて、幸村は動かない足を叱咤し、その場から逃げるように走り出した
走り去る際、男子生徒がこちらに向かって何かを言っていたが、気にする余裕なんてなくて
茶色の髪、そして派手なアクセサリー
そしてセンスよく着崩した制服
そして極めつけは、独眼の
間違えるはずがない
恋人の、政宗だった
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