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「コイツが悪いんだ。コイツが悪いんだ…」
いびつは繰り返し、心の中で唱えます
けれど、
ああ、なんて立派に育ったのでしょう。茶色の羽虫。
僕の中から、飛べるものが育つなんて
空を飛べるものが
育つなんて
いびつは自分が涙を流しているのに、気がつきました。
涙は雨といっしょに、地面へと流れていきます。
「僕のたましいは、もうすぐ抜けるんだ」
いびつが羽虫に言いました。
「そしたら、キミの背中に乗せてくれるかい?」
羽虫は、こくりとうなずきました。
そうして、空が晴れるまで待って、
北の空へと、飛んで行きました。
おしまい🍎
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