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西の乾いた砂と川だけの国に、王子が生まれました。
顔だちの整った、とても可愛らしい赤ん坊なのに、背中一面に、蛇のうろこが生えていたのでした。
それを見た、まだ年若いお后様は、苦しかったお産とショックで、そのまま床に伏して死んでしまいました。
王さまは、そのうろこの生えた赤ん坊を見て
「これは、神の生まれ変わりに違いない」
と、その子が7つの時に、王位を全て授けてしまったのでした。
この国は、蛇を守護神として祭っていたのです。
王子は「へび王」と名付けられ、幼い時から王としての「誇り」や「権限」などを勉強させられました。
けれども、従者もそのほかの家来や女官たちもみんな、彼の背中のうろこを怖れて、彼を心から愛したり、また、人としてたしなめたりする事を、誰も、ひとりもしませんでした。
彼の父親である老王も心の底では、彼を怖れていたのです。
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