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ちょうど、門のそばの窓から、そのやりとりを聞いていたへび王は、窓から身を乗り出して、その女に声をかけました。
「よかろう」
けれども、残酷そうに緑色の目を光らせて。
「けれども、おまえと、その双子のどちらかひとりだけだ。あとのひとりは殺してしまえ。嫌ならここから立ち去るのだな」
一瞬、喜んだ女の顔に苦痛の色が浮かび上がりました。
子どもをどちらかなんて選べやしない。ましてや、殺してしまうなんて!
けれど、ここから立ち退いて元の道を逆もどりとは……まわりは戦いで明け暮れている。ここまで辿り着くのも、運が良かったというのに、戻れとは…三人とも死ねと言うことだ
女は決心して口を開きました。
「子どもをひとりだなんて選べません。かわりに私では、なりませんか?」
「ならぬ!」
へび王は、年若いせいもあって、少年特有の甲高い声を張り上げました。
「おまえが選べぬのなら、子ども達に選ばせろ」
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