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「いやです」
うつむいたまま、ナリタは答えました。
「私は、あなたのそばにいます」
そうして、ゆっくりと額をあげて、ナリタはへび王を見つめます。
その瞳の中に……へび王は、悪夢から醒めた後に、へび王に向けられたナリタの瞳を重ねてみてとりました。
慈愛に満ちた澄んだ瞳…。
「哀れみなど、いらぬと言うのにー!」
けれど、彼はそう言い終わらないうちに、彼女の体を抱きしめていました。
「もう、待ってはいられない」
ネリマはそう呟くと、自分ひとりで城から脱出しました。
―ナリタは、あの幼い日、別れた時に死んだのだ―
何度も、何度も自分に言い聞かせながら
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