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むかし 物語の森をぬけた谷の村に エルニーニョとラニーニャという双子の姉妹がおりました エルニーニョの髪は夜烏のように、艶やかで長く、ラニーニャの瞳は黒曜石のように、キラキラと輝いていました。 ふたりは、とても美しく、そうして対の陶器のように、そっくりでした 村人たちは言うのです 「あのふたりは、なんて綺麗でそっくりなんだ。まるで、生きた鏡のようだ」 その褒め言葉を耳にするたび、エルニーニョは優しく微笑むのですが 妹のラニーニャは違っていました 「いやよ、いや。そりゃあ姉さまは大好きよ。けれど、あたしは、あたしだもの。ふたり一緒に見られたくないの」 ある日 ラニーニャは、そう言うと、自分の部屋に入って、流れるような長い黒髪にハサミを入れました ラニーニャは、髪を短く切ってしまったのです 「大丈夫。これで誰も、あたし達の事を『鏡』だなんて言わないことよ」
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