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奴は犬の名前を決めるみたいな軽さで僕に話しかけた。
はらわたが煮え繰り返りそうだったが、もはやそんな元気も無かった。
「……なん…」
何だっけ。僕の名前。
「そうか、“ナン”か。漢字を当て嵌めれば“南”がいいかな」
「!、違っ!」
そんなわけないだろ
しかし奴の気はとんでもなく早かった。
「うるさい、いいんだよどうせ思い出せないだろうから」
本当に腹が立つ。まあ図星だけど。
「……………」
現実だったらこいつ確実にハブられてるだろうな。
こんなうざい性格、日本で通用すると思うなよ?
体育のパス練習で一人だけ余れ。
「余んねーよ」
なんで考えてることわかるんだよ!
「なんかそんな気がしたから」
キモいー!
「うっさいな、いい加減諦めろ」
諦められるか!
まったく、こんな現実離れしたこと。
全部夢オチならいいのに。
夢オチ?
うん?夢オチ?
「……………」
長い思考のすえ、僕の中で、まめ電球のか弱い光が僕の脳細胞を照らした。
「…………………………………………………そうか!」
「ん?」
不思議そうな顔のコスプレ野郎を、僕は決意に充ちた目でひたと見据えた。
この世に説明出来ないものなど、ない。
だがもしも説明できないとしたなりば、それは僕のレム睡眠が生み出した仮想現実に外ならない。
つまりこういうこと。「魔王、僕はリアリストだ。これは間違いなく、僕の作り出した夢だ」
多分、奴には理解できなかったのだろう。
案の定阿呆ずらで僕を見ている。
「はぁ?おま……」
奴の言葉を遮って、僕は声を張り上げた。
「だから!僕は証明してみせる。僕が起きて、この世界は夢なのだと!それまで……」
魔王はもう何も言わずに僕を見た。
「この夢に付き合ってやる」
「あほか、偉そうなんだよ」
杖で殴られて、僕は頭を押さえた。
こうして僕は夢の中で、このコスプレ野郎のしたでしばらく働くことになったのだった。
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