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「ここがお前の部屋、風呂、トイレは左のドアだから。屋敷は適当にうろついていいよ。飯は出来たら呼ぶけど、外食のときは早めに言っとけよ。あ、掃除はこまめにしろよ」
あのあと魔王といろいろ話して、僕は当たり前のように屋敷(すっごい広い)の二階の東の角部屋(すっごい広い)をあてがわれた。
というか、屋敷のルールが高校生のいる家庭並というのがすっごい気になる。
晩御飯は何だろう。
部屋に鍵をかけて、僕はぐるりとあたりをみわたしてから、ぽつんと置いてある白いシングルベットに腰を下ろした。
魔王との会話を思い出してみる。
時間は少し遡って、一時間くらい前だ。
「お前の職業は、悪魔だ」
僕を指差して、奴はずばり言い放った。
「は?」
僕は一瞬、何を言われているのかわからなかった。
だってそうだよね、僕は悪魔じゃありませんから。
「だから、いろいろあってお前は悪魔なんだよ。で、最初の仕事がこれ」
耳の穴をほじりながら、コスプレ野郎はさもどうでもよさげに僕に一通の手紙をよこした。
古ぼけた皮洋紙で包まれたそれは、ワインレッドのロウで判が押されていた。
それを見て、僕の脳みそは理解することを拒否し始めた。
つまり、めっちゃめんどくさそうなんだけど、っということ。
「待て、なんかもういろいろ分からないんだけど、いちからちゃんと説明してくんないかな…えっと……」
そういやこいつ、なんて呼べばいいんだろう。
その空気を察してか、魔王は思い出したように自己紹介を始めた。
「あぁ俺の名前?長いからよく聞けよ?えー、ごほん、俺の名前は、“ケンタウルス=シウシセリ=ローマイリッヒ=ウルスルマ、二世”だ」
その時僕は気付いた。このやたら長い名前、頭文字をとって並べてみると
「……“ケンシロウ”だ………」
心底どうでもいい。って気付いてから気付いた。
「で、お前が悪魔な理由だけど」
僕を無視して、奴は勝手に説明を始めた。
心が黒いからとかいったらぶん殴ろうとおもう。
しかし、ケンシロウの口から出たのは、実に意外な言葉だった。
「……ナンの魂のレベルが結構高いんだよ。普通は能力の低いピクシー程度なんだけど、ナンはエルフも魔法使いも死神もすっ飛ばして悪魔レベルなんだ。俺の代で6人目の快挙だ」
だから6人目の下僕ね。
うれしいのかそうでないのか、わかりません。
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