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プロローグ
「君が好きなんだ」
そう告げる貴方の目はとても真剣で、同性とかそんな事さえ些細に思えてしまう。
だけど、僕には受け入れる事は出来ない。
だって、貴方は僕の大切な友達の好きな人だから…。
それに僕は、他に好きな人がいる。
「ごめんなさい…」
だから、精一杯の気持ちを込めて、僕は断るしか出来なかった。
「やっぱりね。君は彼方が好きなんだ?」
「知っていたんですね」
そう僕が好きな人は、貴方の隣に並んでいる東條彼方先輩。
「君の視線を見ていれば分かるよ」
そんなに僕は、あの人を見つめていたのだろうか?
貴方が気付くぐらいに…。
「そんな顔をしないで。君を困らせたいわけじゃないんだからね」
どこまでも優しい貴方。
彼方先輩よりも先に出会っていて、貴方が親友の想い人じゃなかったら、間違いなく僕は好きになっていたと思う。
だけど、それは仮定の話。
現実はこう。
「お願いがあるんだけど、これからも今まで通りに接してくれるかな?」
「はい」
僕だって、貴方と気まずくなんてなりたくないよ。
だって、そんな事になれば、何かあったって、回りにバレてしまうもの。
「良かった。じゃあまた明日ね依緒」
そう言って貴方は、僕に手を振って校舎の方へ戻って行った。
この時、貴方を受け入れていれば、僕はこの後に訪れる悲劇を回避できたのだろうか?
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