悲劇の開幕ベル

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「……」 少女は、目の前に突き出された現実を、ただ、呆然と見つめていた。 「……うそ」 少女の足元には、薬局で買ったモノの空き箱が雑に開かれたまま、虚しく落ちている。 「そんな……っ!」 小さな震えた声を漏らした直後、体の力が抜けて、右手に持っていたモノをポトリと落とした。 妊娠検査薬。 結果…… “陽性” 少女は絶望を見、頭をうなだれ、肩を抱いてうずくまった。 リビングにいる母親に気付かれないように、涙と共に溢れ出しそうになる声を押し殺した。 高坂 菜葉(こうさかなのは)。 冷たく暗い、17歳の夏の始まりだった――。
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