1話

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〔オギャーァ〕〔オギャーァ〕 部屋に元気な女の子の声が響き渡る。      髪は漆黒。 瞳も全てを飲み込む様な漆黒。 普通なら小さな命の誕生を祝うものだが‥ 此処では女児の誕生を祝う者はいない。    〔オギャーァ〕 「うるさいなー!誰か黙らせろよ!」   「たくっ‥殺すか?」 〔オギャーァ〕〔オギャーァ〕 「本当っ うるさくてかなわんな‥」 白衣を纏った研究員の男達が女児と成人女性を取り囲んで話している。 「殺すなよ‥‥赤子でも貴重な“モルモット”なんだからな‥」 部屋に入って来た30前後の男性の声で部屋は静まり返る。 「ガハルさん ですが‥うるさくて‥‥」 困り果てた顔でガハルと言われる男に「赤子が煩い」と訴える。 〔オギャーァ〕〔オギャーァ〕 「生まれたてのガキは煩くて当然だ お前ら科学者のくせにわからねぇのか?」   再度、静まり返る部屋。 「ほー 可愛いらしい女児じゃねーか」 ガハルは手慣れた手つきで赤子を抱き、あやす。 赤子はガハルの腕の中で寝息をたてる。 「おい‥それは処分しろよ。 証拠を残さずにな」 実験台の上に横たわる女性を顎で指し示する。 赤子を産むと同時にこの世を去った女児の母。 「ガハルさん 赤子はどうするんですか?」 ガハルの腕の中で寝ている赤子を指差し尋ねる研究員。 「モルモットとしても使えるが‥女としても高値で売れるだろう(笑) コイツは美人になるぞー」 赤子の頭を撫でながら言うガハルの顔は言葉では言い表せない顔つきをしていた。  「育つのが楽しみだな」 ガハルはそう言い赤子を抱いて部屋を出て行った。 「ガハルさんって鬼畜だな」 「俺達も人のこと言えないがな‥」 「俺は自分の実績さえ残せれば何でもするぜ」 「まーなっ‥その為に此処にいるわけだしな」 赤子の母を何十にもビニールに包みながら話す研究員達。 .
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