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兎に角、僕は希望の光だと思ったのだ。
黒のローブに身を纏って、寡黙に此方に近づいてくる様はまさしく救世主。他の仲間も涙を流して彼に駆け寄って行く。
でもその手に握っているウェアウルフの頭を見るや否や、皆は声にもならない悲鳴を上げて後ずさった。
彼は別段気にした風もなく、丁度円のように開いた場所にそれを投げ棄てた。其れは宙を舞い、紫色のサツマイモのように膨張し、突き出た舌が土を舐めると、僕らは誰一人としてその場を動けなくなってしまった。
―――ジャリ。
はっとして目を見開く。するとウェアウルフが勢いよく視界に入ってきて、胃液と、それからなにか言い知れないものが吐き気となって込み上げてくる。
「――――は、何処だ」
「え、」
聞き取れなかったんじゃない。吐き気を抑えるのに必死で、聞いていなかったのだ。
「ネジは、何処にある」
間近で見る救世主の目は、遠くを見ているようで何も写していないと、直感するほどに。
そしてそれを直感出来る程の時間も無く、僕の頭には風穴が空いていた――――――。
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