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「キャァッ!」
伊吹は後部座席で悲鳴をあげた。
「どうした!?伊吹?!」
「人が潰れ…ゴホッ!ゴホッ!」
伊吹は青ざめ、噎せ込んだ。胸に手を当て、嘔きで乱れた呼吸を落ち着かせる。
「伊吹、どうした?空酔いか?」
「違う…違うの…。人が死んでいく悲痛が…」
伊吹は死んでいった人々の悲痛の叫びを、思念波を媒体として感じ取ったらしい。
「テレパシーって案外不便なんだな…」
「人が死ぬ瞬間は一層強まるから…ムゴいと拒絶反応があるんだよ…」
伊吹は朦朧とする意識を大沢との話や風景に集中して徐々にはっきりさせていった。
「伊吹!俺の操縦巧いだろ…!」
「…うん」
「降りたら今度遊覧飛行で一緒に夜景を見よう」
「…ありがと。忘れないからね」
「その意気だ、佑香…!」
「名前で呼ばないでよ…。フライトレコーダーに入ってんでしょ…?恥ずかしいよ…」
「おっと、ごめん」
「ま、…面白いから許すか」
伊吹に微笑みが戻り、大沢は安堵した。大沢は操縦桿に力を込めた。
「待ってろ…ゴジラ!」
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