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そこには、人の形をした「人にあらず者」がいた。
彼女と同じ黒い髪を頭の後ろでくくり、美しい容姿に、銀に似た輝きの白金の瞳をした男が立っていた。
スッポリと黒いマントに身を包み、そこからピリピリと、男から放たれる殺伐とした「気」が伝わってきた。
その眼は、じっと彼女を見つめながら口を開いた。
「お前が…”あの”アスロン?」
「だとしたら何ですか?」ニコっとして彼女は答えた。
「魔王様から、お前を連れてくるように言われた。お前と、会ってみたい…。できれば仲間になって欲しいと。」
「そうですか。数多くいる魔道士の中から、私を選んでいただいた ことは光栄です。しかし、YESと答えることは出来ません。」
アスロンは強い口調で更にこう言った。
「私は”人間”ですから。」
ふっと軽く鼻で笑い、それは言った。
「こっちに来れば、それなりの代償をやると魔王様は言っている。」
「代償?」
「そうだ。」
人にあらず者はニヤッと笑った。その顔に少しの笑顔はあったが、その白金の瞳は怪しく光っていた。
「まぁ…その前にちょっと試させてもらうがな。」
男はそう言うと、マントからスッと右手を体の横に出した。
ヴォン……。
男の手に、漆黒の剣が現れた。
その様子を見て、彼女は嘲うかのように言った。
「私を試すですって?言っておきますけど、私すごく強いですわよ?」
「いいだろう。こっちも手加減はせぬ。」
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